歯科症例1 口鼻瘻管
口鼻瘻管とは字の通り口と鼻が繋がるというものですが、歯周病が進行すると、このような事が起きてしまうことが多々あります。
みなさんもご存知のように歯は顎の骨(=歯槽骨)に歯根が埋まっています。
歯に歯垢が付着すると、歯垢はいわゆる細菌の塊のため、炎症が起こります。
その炎症が組織を破壊することで、歯周ポケットは深くなり、歯槽骨は溶解吸収されていきます。
犬歯のような歯の部位にそれが起こると、鼻腔との間の骨がもともと非常に薄いため、口と鼻が繋がってしまうことが度々あります。
この状態を口鼻瘻管といいます。
びっくりするような状態ですが、犬の中では意外に多い病気です。症状としてはくしゃみや鼻汁、鼻血などです。
この口鼻瘻管になってしまった場合、歯石の除去だけでは改善せず、基本的には原因となっている歯の抜歯が必要です。
口鼻瘻管の起こりやすい場所としては、上顎犬歯、上顎第3、第4前臼歯があげられます。
どの犬種にも起こりえますが、m.ダックスは特に多い印象があります。
症例1(ミニチュア・シュナウザー、オス、6歳)

治療前の口腔内です。
全体的に重度の歯石の付着と歯肉の退行が認められます。
歯周ポケットの測定では、左右ともに、とくに上顎第3、第4前臼歯の口蓋側(内側)のポケットが深く、歯槽骨の重度の吸収が疑われました。

右上顎第3前臼歯を抜歯したところです。

つづいて右上顎第4前臼歯を抜歯したところです。
抜歯した部分から膿(白い部分です)が出てきているのが分かります。

膿汁の出ている部分を洗浄してみると、第3前臼歯の遠心根、第4前臼歯の近心根周囲の歯槽骨部分が大きく吸収されていました(溶けて無くなっていました)。さらにその部分は深い穴になっており、その穴は鼻腔に通じている事が確認されました。

病変部分を十分に掻爬と洗浄後、フラップを形成し、欠損部分を閉鎖。
術後は経過も良く、当日から食欲もあり、飼い主さんも元気になったと喜んでおられました。
歯根部にあれだけの膿汁がたまっていたわけですから、痛みや不快感も強かったのでしょうね。