病院日記

2011.02.13(日)

昨日は膀胱の移行上皮癌で治療しているラブラドールのアンズちゃんが一週間ぶりに来院してくれました。
アンズちゃんは、主治医の先生のご紹介で排尿困難(おしっこする姿勢をしてもポタポタしか尿が出ない)の症状で来院されました。CT検査や生検による病理検査の結果、膀胱三角部から膣におよぶ移行上皮癌で尿道が閉塞している状態でした。尿道の確保のために会陰切開をして、尿道を確認してカテーテルを入れる予定でしたが、尿道の開口部がどこかも分からない程に腫瘍が浸潤していたため、尿道口からのカテーテル挿入をあきらめ、排尿の確保のために、膀胱皮膚瘻(膀胱からお腹の皮膚にカテーテルを出す手術)の手術をおこないました。
腸骨下リンパ節にも腫瘍の転移が見られ、後ろ足もむくみが出て、元気食欲も低下していました。
飼い主さんとご相談の上、少しでもQOLを確保するために今まで使用していたNSAIDSに併用する形で高濃度ビタミンC点滴療法を始めました。
すると、飼い主さんだけでなく、僕たちも驚いたのですが、2週間程度で後ろ足のむくみがなくなり、元気と食欲も病気になる前と変わらず、ハイパーなあんずちゃんに戻りました。その上、今でも排尿確保のために膀胱にカテーテルが入っているのですが、カテーテルの挿入の手術をするときには、全く自分で排尿できなかったのに、今は1日の尿の2/3程度をカテーテルからではなく、自分で尿道からできるようになっています。これには正直驚きました。
膀胱の移行上皮癌にはNSAIDSが効果がある場合があり、アンズちゃんも高濃度ビタミンC点滴療法ではなく、NSAIDSが効果を出しているのかもしれません。
でも、そんなことは僕たちにとってはどうでも良いことで(研究者ではないので)、治療でアンズちゃんが元気になって、アンズちゃんと飼い主さんの笑顔が見られることがなによりもうれしいんです。
少しでも長くアンズちゃんの笑顔が見れたらいいなあ。

 
膀胱の移行上皮癌は以前い比べてとても増えていると感じます。
膀胱は尿として体内の老廃物などを排泄する臓器ですから、様々な化学物質や環境汚染物質などの影響もあるのかなあと勝手に想像していますが・・・。
いずれにしても早期発見が一番です。
症状としては血尿や頻尿、排尿困難などの膀胱炎などと同じような症状が出ます。もちろん初期には症状は出ないことも多々ありますから、日頃の観察と健康診断はとても大切ですよ。


投稿者:院長


2010.12.12(日)

昨日、椎間板ヘルニアの症状で来院したダックス君。
なんと立てなくなったのは今年のゴールデンウィークでした。すでに7カ月たっています。
ほんの少しの可能性にかけて、神経学的検査をおこなうと、残念ですが、深部痛覚はなく、椎間板ヘルニアグレード5でした。
少し前までは椎間板ヘルニアはグレード5の場合、48時間以内に手術をおこなわなければ改善は期待できないと言われていました。しかし、最近ではその「48時間神話」は崩壊し、ある程度時間が経過していても回復する可能性はあると言われています。
ただ、半年もたってしまっていると、その改善する可能性は限りなく低くなります。また、半年間、麻痺があることで、後肢の筋肉はほとんどなくなっています。かりに手術がうまくいって、神経も戻る可能性があっても、その筋肉を回復させるためにかなり積極的なリハビリが必要になります。
それらのすべてがうまくいったとして、改善する可能性は10%あるかどうかだと思います。
可能性にかけるのであれば、それでもやる価値は十分あると思いますが、飼い主さんは、そのためにかかる費用、あとはリハビリにかかる時間や自分たちがリハビリをやってあげれるかどうかなどのすべての事を考えられて、残念ですが治療をおこなわず、今のままでいくことになりました。
とても残念ですが、しようがない気もします。
しかし、飼い主さんのお気持ちを考えると、残念でなりません。
症状が出たときに、動物病院に連れて行かれて、もしその際に、内科療法だけでなく外科的治療の提案があったら、もし自分の病院でできない治療であれば、他院を紹介するという選択枝をその先生が提示していたら・・もしかしたら、今は元気に歩けていたかもしれません。
うちでもなんでもかんでも出来るわけではありません。できない治療や検査もあります。でも、その検査が必要な時に紹介できる病院とのコミュニケーションをとっているつもりです。
僕たちは、なんのために治療しているのか、いつも自問自答しています。もちろん、動物と飼い主さんのために治療しています。いつもこの気持ちは持ち続けていたいと思ってます。
でも、残念ですが、まだまだこの業界は、そういう環境が整っていない部分があります。
もし、今行かれている先生が、自分のところでは手に負えないので、他の病院を紹介という提案をされた場合、それはその先生が能力のない先生ではなく、本当に動物や飼い主さんの事を考えてくれている先生なんだと考えてあげてくださいね。
自分の手に負えない病気を、紹介してくれる先生のほうが、自分でなんでもかんでもやってしまう先生よりも、きっとあなたのことを本当に考えてくれる先生だと思います。

しかし、うちのタン君。
よくこの姿勢で寝ていますが、それって「楽」?


投稿者:院長


2010.12.10(金)

なんかとっても久しぶりの書き込みの気がしますね。
病院の方はむちゃくちゃ忙しい!ってほどではないのですが、やはり師走というだけあって、いろんな行事などで、毎日があっという間に過ぎていきます。

さて、今日は本来はお休みを頂いている日なのですが、2日前に排便困難で来院したシーズーのリトル君。大腿部から骨盤腔、さらに腹腔内までの巨大な腫瘍で腸管が圧迫され、うんちが出にくくなっていました。
少しでも早く、楽にしてあげたいと思い、休日を返上して手術をしました。
かなりやっかいでしたが、無事摘出できました。
こういう腫瘍を摘出する際にはCTは本当に役に立ちます。
術前から、腫瘍の浸潤の様子などを確認でき、手術のシュミレーションができますからね。
手術時間が比較的長かった割に、術後の麻酔の覚醒も良く、飼い主さんの面会の時にも、元気いっぱいでした。
飼い主さんが面会から帰られた後、リトル君は「クンクン」ないていたので、きっと寂しいんだろうなあと思いながら、先日ダウンロードしたiPhoneの「バウリンガル」でリトル君のなきごえを翻訳すると・・・「怒りで言葉になりません!!」と翻訳されました。(゜◇゜)ガーン
リトル君、君のために休みを返上して手術したんだよ〜。そんなに怒らないでよ〜。


投稿者:院長


2010.01.26(火)

ウンチがなかなか出ず、出てもぺっちゃんこなんですという主訴で来院したラブちゃん。近くの先生のところで直腸の内診をしてもらい、直腸に腫瘍があるのではないかということで、内視鏡の検査をと言うことで紹介でALOHAに来られました。
まずはラブちゃんの直腸を内診してみると・・・確かに大きなものがあって、腸が狭くなっています。ただ、腸の中ではなく、腸の外から押されているように感じたので、飼い主さんに内視鏡の検査ではなく、CT検査をおすすめしました。
CTの結果・・・ラブちゃんの骨盤の中には大きなしこりがあって、それが腸を圧迫してウンチの通りが悪くなっていることが確認されました。


写真がCT検査の画像で、「mass」と書いてあるのがラブちゃんの骨盤腔内にできたしこりで、結腸を矢印のように圧迫しているのがよくわかると思います。
このままでは、もっとウンチが出にくくなってしまい、大変なことになってしまいます。そこで飼い主さんとご相談の上、手術で摘出することになりました。事前にしこりの細胞診の結果、脂肪腫の可能性が高いと思われていましたので、場所的には手術の難しい場所ですが、おそらく切除できると考えていました。ただ、CTで一部癒着があるように見えるのだけが気になっていました。
しかし、手術は問題なく終了しました。


写真は手術後の写真です。骨盤のなかのしこりが無くなって、結腸の圧迫が取れているのがよくわかると思います。


診断はもちろん、手術前に手術の内容などをシュミレーションできるという意味でも、このラブちゃんのような病気にもCTは非常に有効な検査です。


投稿者:院長


2009.12.29(火)

IBD(炎症性腸疾患)という病気をご存じですか?
6ヶ月も下痢が止まらないという主訴で来院されたリキちゃん、まだ1歳の柴犬です。リキちゃんは今まで別の病院でずっと治療を受けていたと言うことでしたが、どんな薬を使っても全く下痢が止まらないと言うことでした。
このような場合、慢性下痢と言うことになりますから、炎症性腸疾患やリンパ管拡張症、膵外分泌不全、リンパ腫、食物過敏症など様々な慢性下痢を起こす病気を考えていかなければいけません。
リキちゃんの場合、今までの治療経過などから考えて、まず飼い主さんに内視鏡下での腸の生検を提案しました。半年間も下痢が続く事に飼い主さんもなんとかしてあげたいと思われていましたので、すぐに生検に同意していただきました。内視鏡で十二指腸、胃、結腸をあわせて20カ所程度生検し、組織検査に出しました。組織検査の結果、リキちゃんは重度のリンパ球形質細胞性腸炎と診断されました。
リキちゃんは食事療法と腸内細菌のコントロールである程度は症状が改善しましたが、まだ少し便の回数が多いと言うことで、先日からステロイドの投与を開始しました。あとはステロイドの量を減量しながらコントロールしていかなければいけません。
症状の程度は様々ですが、炎症性腸疾患は意外に多い病気です。診断は生検でしかできませんので、慢性的な嘔吐や下痢を起こしている子は内視鏡での生検を主治医の先生に相談してみてあげてくださいね。


関連タグ IBD 炎症性腸疾患 リンパ球形質細胞性腸炎 

投稿者:院長