免疫療法の話しをするまえに、まずは免疫について簡単に書いてみますね。
みなさんは「免疫」ってどのようなものかご存じですか?
私たち人間や動物たちの周りには、細菌やウイルスなどの「異物」がたくさんあります。そんななかで私たち人や動物が健康に暮らすことができるのは、このような細菌やウイルスと闘ってくれる「免疫」という機能が体に備わっているからです。
この免疫の主役は白血球ですが、この白血球は大きく「リンパ球」「単球」「顆粒球」の3つに分けられます。
また、免疫には「自然免疫」と「獲得免疫」があります。
自然免疫は体内をパトロールしてあやしいものをみつけだし、見つけるとそれを貪食(敵を食べて消化酵素で溶かす)などの作用でやっつけます。これらの自然免疫に関係しているのが顆粒球の中の好中球、単球、リンパ球の中のNK細胞といわれる細胞達です。
次に獲得免疫ですが、この獲得免疫は自然免疫に関与している単球のなかの樹状細胞という細胞から、敵の情報を受け取って、ある決まった敵だけを攻撃する免疫で、この免疫にはリンパ球(ヘルパーT細胞、キラーT細胞、B細胞)が中心となって働きます。人や動物でよく利用されるワクチンもこの獲得免疫を利用しています。
免疫療法はこれらの体内で免疫に関係している細胞を採血で採取し、その免疫細胞だけを体外で培養して増やし、体内に戻すことで免疫力を上げ、癌と闘う治療です。自分の細胞を体外で増やして体に戻すだけなので、副作用がほとんどないというのが良い点です。

免疫療法について少し調べたことがある方はご存じかもしれませんが、免疫療法にはLAK療法やCAT療法、DCワクチン、DCI療法など様々な方法があります。
これは簡単に言えば、体外で増やす免疫細胞の種類などが異なります。
ちょっとややこしい話しになりますが、できるだけ簡単に説明しますね。
まずはLAK療法ですが、これは採取した血液の中から主に「NK細胞」を増やすものです。NK細胞は強い殺傷能力をもった細胞で、それを体内に戻すことで、癌をやっつけてくれることを期待する治療です。ただ、LAK療法は自然免疫の細胞で、特定の細胞を攻撃することはできず、異物という異物を手当たり次第にやっつけていきます。つまり癌だけを特異的にやっつけるという事が出来ないという点が欠点で、それを補うために、癌のある場所に直接投与するなどの方法が試みられています。
これに対してCAT療法は獲得免疫のメンバーであるT細胞を増やす方法で、免疫細胞の中のエリートであるT細胞を入れることで癌を集中してやっつける事を期待しておこなわれます。ただ、CATで増やしたT細胞がすべてが癌細胞を敵と認識しているとは限らず、これがCAT療法の欠点だと言われています。
DCというのは先程も書いた「樹状細胞」のことですが、これはT細胞に敵の情報を提示する細胞、いわゆるT細胞の先生です。DCワクチンというのは体外で樹状細胞を培養し、さらにそれをがん細胞と体外で一緒にすることで樹状細胞にがん細胞の情報を教えます。そうすることで、樹状細胞はがん細胞を敵と認識し、これを体内に戻すことで体内のT細胞に癌の情報を伝達し、T細胞にがん細胞を的確に攻撃させることを目的とした治療です。
DCワクチンは体外でがん細胞と樹状細胞を結合させるために、がん細胞が必要になります。それに対して同じ樹状細胞を使うDCI療法は樹状細胞を体外で増やし、その増やした樹状細胞を直接癌に注入することで、樹状細胞に癌の情報を覚えさせる治療で、手術の適応にならない患者さん、手術を希望されない患者さんにとっては、良い方法だと言われています。

このような副作用がほとんどなく、体の免疫を利用した免疫療法ですが、やはり万能な治療ではありません。免疫療法の利点と、欠点を書いておきますね。

免疫療法の利点

  1. 副作用がほとんどない
  2. 他のガン治療(手術、放射線、化学療法)との併用ができ、また併用によって相乗効果が期待できる
  3. 免疫療法によって体内にでる内因性オピオイド(βエンドルフィン)には、抗癌作用の他に鎮痛作用や多幸感を与える作用があるため、動物の生活の質(QOL)の向上が期待できる
  4. 延命効果が期待できる

免疫療法の欠点

  1. 腫瘍の拡大防止や転移の防止などの作用は期待できるが、大きな腫瘍を縮小させるなどの効果には乏しい(ただしDCI療法は人の臨床試験で17人中12人の患者さんに腫瘍の増大停止や縮小などの効果が報告されています)

私たちは以下のような患者さんに免疫療法をおすすめしています。

  1. 腫瘍は摘出したが、病理検査で転移の可能性、あるいは脈管内浸潤の疑いがあると言われた患者さん
  2. 本来は化学療法の適応だが、化学療法を希望されない患者さん
  3. 化学療法で副作用が出てしまい、化学療法を続けることができない患者さん
  4. 腫瘍が大きかったり、転移があったりの進行癌だが、動物の生活の質を保ちたい患者さん
  5. 癌の末期だが、少しでも癌による痛みをとったり、生活の質を保ちたい患者さん
  6. 化学療法や放射線療法と併用することで、相乗効果を期待する場合

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