2010.09.29(水)
カテゴリー: 再生医療
では、昨日の幹細胞移植に続いて、今日は「活性化リンパ球療法」について書きます。
これは幹細胞の移植と違って、基本的には癌などの悪性腫瘍に対する治療になります。
みなさんは、癌の治療というと何を思い浮かべますか?まずは手術ですよね。では次に思い浮かぶのは?そうです、抗がん剤などの化学療法ですね。それ以外に、動物でも最近は比較的おこなえるようになった放射線療法があります。この「手術」「化学療法」「放射線療法」が癌に対する主な治療として、昔からおこなわれてきました。おそらくそれは今後も大きく変わることはないと思います。そこに第4の治療法として「活性化リンパ球療法」などの「免疫療法」や「温熱療法」などがおこなわれています。
では、次に癌の治療を「局所療法」と「全身療法」という考え方で考えてみましょう。「局所療法」とはいわゆる今問題になっているしこりに対する治療で、たとえば皮膚にできている肥満細胞腫や、乳腺に出来ている乳腺腫瘍などのしこりに対する治療です。「手術」や「放射線療法」がこの局所療法になります。「全身療法」とは今問題になっているしこりだけでなく、全身の様々な場所に転移した癌に対する治療です。その転移はしこりになっている場合もありますし、肉眼では見えない細胞レベルのこともあります。抗がん剤を使用した「化学療法」がこの全身療法になります。
では、「活性化リンパ球療法」はどちらになるかというと、化学療法と同じ「全身療法」になります。
つまり、今まで全身療法の選択肢は抗がん剤による化学療法しかなかった部分に、新しい選択肢として「活性化リンパ球療法」を使うことができるようになったということです。
化学療法は人でもあたりまえのようにおこなわれる治療です。でも、実はすべての癌に対して効果があるわけではありません。リンパ腫のようにかなりの効果が期待できるものもあれば、効果のほとんど認められない癌もあります。でも、もし転移があったら、化学療法しか現実的な選択肢がないので、効果があるかわからないけど可能性にかけた治療として化学療法がおこなわれることが少なくありません。確かにそれで効果が上がることもあれば、逆に抗がん剤の副作用で苦しむ場合もあります。これに比較して、活性化リンパ球療法は自分の血液の中のリンパ球を外で増やして体に戻す治療なので、抗がん剤に比べて副作用がほとんどないのが特徴です。
僕は化学療法を否定しているのではなく、今でも化学療法は日常的によくおこなっていますし、これからもやっていくでしょう。でも選択肢の1つとして活性化リンパ球療法はとてもいい治療だと思っています。
活性化リンパ球療法は大きな癌を縮小させたりする力はありません。でも、癌の進行を遅くしたり、動物の生活の質を上げたり、痛みをとる作用が報告されています。
人でもよく言われていますが、癌と闘うために、手術をしてそのあと抗がん剤を使ってずっと入院というのも選択肢の1つですが、癌が完治できなくても、入院をせずに、旅行や親しい人との時間を大切に過ごすという選択肢もあってもいいと思うんです。
この子の癌は治らなかったけど、最後まで元気そうで、飼い主さんといっしょに過ごせて、飼い主さんもとても満足してもらえたという治療があってもいいと思うんです。
日々、たくさんの癌の患者さんと接していると、今できる可能な限りの治療(たとえば手術をして、抗がん剤を使ったり、場合によっては放射線もしたり)をしていても、動物がつらいだけで、飼い主さんも疲れ果て、最後にその子が亡くなったときに、「もう動物は飼いません」といわれる事があります。僕たちにとって、こんなにつらいことはありません。だって、動物との生活はとっても楽しいのに、その楽しさ以上の苦しみを飼い主さんに与えたことになるからです。
少しでも動物たちに、長く飼い主さんの側にいさせてあげたいと思う気持ちで治療をすることが、逆に動物と飼い主さんを苦しめていたんじゃないかと自分を責めることもあります。
だからこの活性化リンパ球療法をやりたかったんです。動物に負担がほとんどなく、動物の免疫を高め、生活の質を維持する可能性のある治療。他の治療とも併用ができ、相乗効果が期待できる治療。
これが僕のやりたかった、第4のガン治療「活性化リンパ球療法」です。
今もAnimal Care-Hospital ALOHAのインキュベーター(培養器)には何匹かの患者さんのリンパ球が培養されています。たくさんのリンパ球や幹細胞の培養で、インキュベーターがいっぱいいっぱいになったため、急遽インキュベーターのたなを増やすことになりましたが、どの子の血液も、少しでも多くのリンパ球が増えるように、大切に大切に培養しています。そしてそのリンパ球を動物たちに返すとき、「がんばって癌と闘ってこい」という気持ちで送り出しています(というか自然とそういう気持ちになるんですよね)。
下の画像は培養中のリンパ球です。赤色の培養液の中で、小さい白いものがふよふよ動いているのが分かりますか?これが増えているリンパ球です。体内に入って、がん細胞と闘う小さな小さな兵隊達です。
がんばれ〜って気持ちになりませんか?
なんか、昨日の幹細胞といい、今日の活性化リンパ球療法といい、僕の思いが強すぎて、全然説明になっていませんね(^_^;)。まあ、細かいことを説明しているサイトはたくさんありますので、こういう思いを使えるのもいいですよね?
投稿者:院長
2010.09.27(月)
カテゴリー: 再生医療
Animal Care-Hospital ALOHAではついに念願の「活性化リンパ球療法(CAT療法)」と「幹細胞移植」を開始しました。
活性化リンパ球療法と幹細胞移植をやりたかったのには訳があります。
たとえば椎間板ヘルニアのグレード5で来院された子に、手術をし、確かに70%以上の子は歩くことができるようになります。それは本当にうれしいことですし、飼い主さんにも喜んでいただけます。でも、グレード5まで進行していると、残りの30%近くの子は、手術をしても神経学的な改善は認められません(グレード4まではもっと改善率がいいのですが)。少しでもその子達に歩けるようになって欲しいと思い、数年前からリハビリを積極的に行い始めました。確かにリハビリの効果はすばらしく、リハビリをがんばったから歩けるようになった子もいます。
でも、でも、それでも歩けない子もやはりいるんです。リハビリで脊髄反射を強めて、脊髄歩行を促そうとしても、脊髄反射は強くなるものの、歩行までいけない子もいます。
その子達を歩けるようにしてあげたいという気持ちで、次に目指したのが幹細胞移植です。
みなさんも、テレビなどで見られたことがあるのではないでしょうか?脊髄損傷で歩けなかった人が幹細胞移植をして歩けるようになったシーンを、糖尿病でインスリンの注射が必要だった人が幹細胞移植をおこなってインスリンの注射がいらなくなったニュースを、腎不全のマウスに幹細胞を移植して腎機能が正常になったというニュースを。
幹細胞移植には今までの医学では助けることのできなかった患者さんを救うことのできる可能性があると思っています(もちろん万能ではありません)。
幹細胞を移植することで、歩けるようになる子がいるかもしれない・・・そう思うと幹細胞移植を始めたいという気持ちが抑えきれなくなっていました。幹細胞移植のトレーニングに行く日程がなかなか調整がつかず、実際ははじめようと思い立ってから、実際にできるようになるまでに半年かかってしまいましたが、ついに幹細胞移植をスタートすることができました。
幹細胞移植というと(特に移植という文字があるので)ものすごく大変な事と、思われるかもしれません。でも、幹細胞移植をおこなうには、その子のパチンコ玉程度の皮下脂肪(局所麻酔で採取します)または1ccの骨髄液(短時間だけ麻酔が必要になります)があればOKです。採取させてもらった皮下脂肪や骨髄液を大切に、そして無菌的に培養して、その中に含まれている幹細胞を増やし、点滴などで体内に戻すだけなんです。手術などが必要なわけではありません。
今、原因不明の急性の脊髄炎の子、熱射病で間脳と大脳に障害を起こした子、椎間板ヘルニアの子が幹細胞の移植の準備に入っています。
この子達が立って、歩けるようになったら・・・泣いちゃうな、きっと。
なんか幹細胞移植で盛り上がってしまって活性化リンパ球療法について書けませんでした。こちらは、また次回(^_^)ノ
投稿者:院長
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